SAGOOL(サグール)の紹介記事(日経ビジネス 2007年4月より)

ポスト・グーグル(Google)

ポスト・グーグル(Google)を狙い、日本のベンチャー企業が「世論の把握」を武器に動き出した。

「グーグルだけが基準のネット世界はちょっと窮屈。グーグルの技術を否定する気はさらさらないけれど、欧米とは違う価値基準を持つ日本の基準に合った検索サービスがあってもいい」

チームラボ
異才・猪子寿之社長

186cmの長身に無精ヒゲをはやす猪子寿之は、29歳の若き社長。東京大学在学中の2001年3月に「チームラボ」を起業した。ネットに関する様々な事業を手がけてきた猪子が胸を張るのが、昨年6月に試験版を始めた新手の検索サービス「SAGOOL(サグール)」である。

主観や興味を取り込んだ「オモロイ」検索結果

グーグル検索ではそのサイトが外部から張られているリンクの数を人気の指標として、検索結果を表示する際の順番に反映する。一方、サグールは日本人の主観や興味を取り込んだ“オモロイ”検索結果を出すことに注力している。

Googleと異なる検索結果

例えば、「ドラえもん」というキーワードを入力して検索してみよう。

グーグルでは、藤子プロの「公式サイト」が最上位に表示される。これに対し、サグールでは「ドラえもん最終回シリーズ総合メニュー」というサイトが最上位に出てくる。「ドラえもんの最終回が最も面白い」というのがネット世論だと判断するからだ。

独自の言語解析処理技術

チームラボが開発した独自の言語解析処理技術を使うと、サイト上の「面白い」「おいしい」「楽しい」といった評価を数値に変換できる。この数値などを基に、サグールが独自の検索基準を作成して、検索キーワードに関連したサイトを導き出す。

日本語を解析して世論を反映した表示結果

単にキーワードに合致したサイトを順番に表示するのではなく、日本語を解析して世論を反映した表示結果を追求するチームラボ。猪子は「ユーザーは電話帳のような検索サービスだけでは飽き足らない。他人がどう評価しているかを知りたがっている」と話す。

産経新聞社の情報サイト「イザ!」
チームラボが設計・開発

他人の評価は自分の評価に影響を及ぼし、そうした評価の総和が世論を形成していく。サグールはその一助だ。チームラボはこのほかにも、違う世論形成の仕組みも手がける。

産経新聞社の情報サイト「イザ!」。産経グループが発行する媒体の記事を「政治」「ビジネス」「スポーツ」「芸能」などの部門に分類して表示。読者は感想や意見、関連する情報などを自由に書き込める。チームラボはこのサイトの設計・開発を手がけた。

読者が感想や意見を書き込みやすくする

現役記者約70人のブログや記事の文中に登場する用語を解説するキーワード集も用意。1つの記事を巡って読者が感想や意見を書き込みやすくする工夫で、情報の奥行きを広げている。

2位の読売新聞に大差をつけてトップ

調査会社のネットレイティングスによると、産経グループの2007年1月のアクセス数は988万9000人と、2位の読売新聞の668万人に大差をつけてトップを走る。新聞発行部数では219万と読売の5分の1にすぎない産経がネットの世界で躍進した原動力は「世論の顕在化」を求める読者ニーズをうまく捉えた結果と言える。

ブログは個人の価値観や意見を不特定多数に発信する定番ツール

他方では、ブログから世論を見極める新手のサービスも登場している。ブログは個人の価値観や意見を不特定多数に発信する定番ツールとなった。

調査会社のビデオリサーチインタラクティブによると、2006年に日本のブログを閲覧したユーザーの数は2687万人。国民の5人に1人が見ていることになる。

BuzzTunes(バズチューンズ)

だが、情報発信側のインフラが整備される一方で、読み手側のインフラ整備はまだ途上の段階。例えば「マイクロソフト」について、ネットで情報を発信する人々はどういった印象を抱いているのか。グーグル検索では上位にマイクロソフトの関連公式サイトが登場するばかりで、調査するには骨が折れる。

そこで、ネットに敏感なブログ読者の間で話題になっているのが、昨年12月にオープンした評判検索サービスの「BuzzTunes(バズチューンズ)」だ。

キーワードに対してポジティブなのか、ネガティブなのかを数値化

国内71のブログ・サービスや個人自らが持つブログの合計約375万のブログの内容について常時、自動的に巡回して情報を収集。キーワードの前後にある文脈を解析し、そのブログがキーワードに対してポジティブなのか、ネガティブなのかを数値化している。

「口コミ好感度」も算出

例えば「マイクロソフト」と入力すると、マイクロソフトについて論じているブログをポジティブ順、ネガティブ順に表示する。加えて各ブログの評価の平均値を割り出し、1~10の点数で「マイクロソフト」に対する「口コミ好感度」も算出する優れものだ。

C2cubeの内田善久社長

「グーグルはページをナビゲートしているだけで、事象についてナビゲーションしているのではない。何かを調べたい時に、必ず知りたいのは評判。だからこのサービスを作った」

そう語るのは、バズチューンズを運営するC2cube社長の内田善久。グーグル日本法人から熱烈なアプローチがあった時期もあったが、「会社ごと買収したいという話になったため、断った」と明かす。技術は折り紙付きだ。

「ハンカチ王子」といった未知の語句にも対応

新たに開発した日本語の解析技術は「ハンカチ王子」といった未知の語句にも対応し、ブログでありがちな乱れた日本語でも意味内容を的確に判断できるという。さらに最新のブログを対象に解析するため、リアルタイムでの評判の推移も把握できる。

評判検索エンジン
日立情報システムズと共同で

例えば、3月7日に墜落したガルーダ・インドネシア航空。「ガルーダ」というキーワードの好感度は、3月6日の「6」から、事故当日には既に「3.5」まで下がっていた。

「ユーザーも企業も的確にネット世論を把握できれば、ネットの世界はさらに便利なものになる」

そう語る内田はこの評判検索エンジンが様々な形で活用されると見ている。3月13日からは、日立情報システムズと共同で企業向けに評判検索エンジンを提供する事業を始めた。グルメサイトや大手ポータルサイトが既に自社のサイトに組み込み、ユーザーが評判検索をできるようにするためのテストを始めている。

「検索連動型広告」にも応用が可能
酷評しているブログに商品の広告

検索キーワードに関連した広告を表示する仕組みの「検索連動型広告」にも応用が可能だ。キーワードにいくら合致しても、酷評しているブログに商品の広告を掲載してしまったら、逆に企業イメージに傷がつく。これを回避する仕組みとして、あるアフィリエイト広告大手が評判検索エンジンの導入を検討しているという。

相性検索エンジン
出会いを促し、同好の士や、議論の場を探しやすく

さらに内田は日本語解析技術を応用した新手のサービスを準備している。その名も「相性検索エンジン」。自分のブログの日本語を相性検索エンジンが解析し、「友人にするなら」「討論するなら」「相談するなら」という3つの座標軸で、相性の良いブログの書き手や記事を表示するサービスだ。出会いを促し、同好の士や、議論の場を探しやすくする。今夏までに試験版を公開する予定で開発している。

kizasi.jp(キザシ・ジェーピー)

「流行の兆しを、いち早く把握する」。「kizasi.jp(キザシ・ジェーピー)」はそんな企業のマーケティング関係者からすれば垂涎のサービスを提供している。国内のブログで過去24時間に新しく記述された言葉を集計し、流行のキーワードを順位付けする。

潮栄治・きざしカンパニー社長

運営するきざしカンパニーの社長、潮栄治は「ブログのあちこちで発言された言葉が、実は流行の兆しとなっている可能性が高い。ネットでの流行は現実世界の映し鏡。世論形成をいち早く把握する道具としてネットは有効に利用できる」と話す。

キザシでは、頻出したキーワードに関連した言葉も同時に集計する。例えば、昨年は3月と8月に「感動」というキーワードがブログの中で頻出した。その理由は「3月にワールド・ベースボール・クラシック、8月には甲子園があったから」とキザシの検索結果から容易に把握できる。

大企業がネット掲示板「2ちゃんねる」をチェック
かつては「便所の落書き」

ポスト・グーグルが目指す「ネット世論の顕在化」は世論形成の裾野を広げ、スピードも速める。

「ネット掲示板は便所の落書き」。かつてはそう揶揄されたネット掲示板「2ちゃんねる」も、今では大企業の担当者がつぶさにチェックをする存在になった。ネット世論に媚びる必要はない。だが、それを無視することは、新しい時代の社会でビジネスチャンスを失うことになる。

検索サイト~検索順位の並び順は企業秘密(2007年9月)

カテゴリーごとに分類

「ディレクトリ型」検索エンジン

インターネット上にある膨大なサイト情報をキーワードで絞り込み、ユーザーに提供する仕組みは、90年代初めに大学の研究室などで開発が始まった。

当時の発想はこうだ。まずネット上にある情報をできるだけたくさん集め、それをカテゴリーごとに分類して保存しておく。ユーザーは、そのカテゴリーの中から、例えば「世界」→「アジア」→「日本」→「東京」というふうに少しずつ検索の対象範囲を絞り込んでいき、欲しい情報が載っているサイトを探す。「ディレクトリ型」と呼ばれる検索方法だ。

登録漏れ

この方法の場合、ユーザーが欲しい情報にたどり着けるかどうかは、あらかじめどれだけたくさんの情報を登録しておけるかがかぎとなる。 ネットの情報が増えてくると「登録漏れ」が目立つようになった。

ロボット型
世界中に数千台単位のサーバー

そこで登場したのが「ロボット型」だ。ユーザーが検索したい情報のキーワードを入力すると、ロボットと呼ばれるプログラムがあらかじめ集めておいたすべてのサイト情報に対して、そのキーワードが含まれていないかどうか探し出し、含まれているものを提供する。情報は飛躍的に増え、正確な量はもはや把握できない。大手サイトでは1千億円近くの費用を投じ、世界中に数千台単位のサーバーを抱えているとも言われている。

二つを組み合わせた「ハイブリッド型」も

現在では「ロボット型」か、二つを組み合わせた「ハイブリッド型」が主流となっている。

かつては、どれだけ漏れなく提供できるかという情報の「量」が競われていたが、現在では、ユーザーが本当に欲しい情報をいかにうまく見せるかという「質」が競争の中心。「旅行」で検索すると「ホテル」「予約」といったキーワードをさらに提案する機能や、「国立科学博物館」で検索すると紹介文が出る機能など、各サイトが様々な工夫を凝らしている。

検索結果の並び順も注目されている。少しでも上位にいる方がクリックされる可能性が高くなる。だが、どのように並び順を決めているかは、各サイトとも企業秘密だ。

国内の主な検索サイト
タイプサイト名URL特徴
ロボット型@niftyhttps://www.nifty.com/search/海外ページを翻訳して表示可能
ロボット型Ask.jphttps://ask.jp/検索結果を選択して保存できる
ロボット型Baidu百度https://www.baidu.jp/中国でシェア1位。日本語は現在テスト版
ハイブリッド型excitehttps://www.excite.co.jp/検索頻度が高い「注目キーワード」を表示
ハイブリッド型Fresheyehttps://www.fresheye.com/1時間前に更新された情報も発見可能
ハイブリッド型goohttps://www.goo.ne.jp/送りがなが違っていても検索できる
ロボット型Google日本https://www.google.co.jp/世界シェア1位
ロボット型Infoseek楽天https://www.infoseek.co.jp/株価情報や有名人のプロフィールなどが連動
ロボット型Live Serchhttps://www.live.com/マイクロソフトのサイト。関連項目を自動表示
ハイブリッド型MARSFLAGhttps://www.marsflag.com/サイトのイメージを画像で表示
ロボット型Mooterhttps://www.mooter.co.jp/自動で分類する「クラスタリング」機能
ロボット型SAGOOLhttps://sagool.jp/他のユーザーが検索しているキーワードを表示
ハイブリッド型YAHOO!JAPANhttps://www.yahoo.co.jp/国内シェア1位、株価情報などが連動して表示